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~第十六話 キラーリ公主VSスーパー・ラバット~ キラーリ公主の野望

Author: 倉橋
last update Last Updated: 2025-09-12 20:47:40

「月世界、セレネイ王国のキラーリ公主は、銀河連邦の常任理事をめざしています。銀河系のみなさんのお力をお待ちしています」

 さわやかな女性のアナウンスが流れた。

 タキシード姿のエブリー・スタインは、キラーリ公主のベッドのそばに立っている。すぐ隣にはスーツ姿の小太りの男がいた。しきりにハンカチで汗をかいている。汗臭いのでエブリー・スタインは眉をひそめた。

「このプロモーション映像は、銀河の各惑星に配信される。姉上が銀河連邦の常任理事になれるかどうかは、この映像にかかっている」

 エブリー・スタインは上から目線で小太りの男を見下ろす。

「デブリー会長。あなたの仕事の成果が問われてますよ。姉上が理事になれば、セレネイ王国は銀河系を代表する惑星として君臨することになる」

 セレネイを代表する芸能プロダクション、「セレネイ・エンター」のデブリー会長はしきりに大きくうなずいている。エブリー・スタインは、デブリー会長の卑屈な態度を見て冷たく笑った。

(見苦しいブタめ。俺とは真逆な人間だ。仕事が出来なければ途上へ送るところだ)

「まことにその通りで」

 デブリー会長が、エブリー・スタインの心の内側を知るはずもない。

 ベッドの上ではキラーリ公主が頬杖をついて寝そべっている。

 半透明のシルバーのシュミーズとシルバーのマイクロビキニブラジャー、そしてマイクロビキニランジェリー、シルバーのショートソックス。いつもの普段着を、今日はだらしなく、やる気もなく着込んでいる。

 今から立体プロモーション映像の鑑賞時間である。

 もうひとりのキラーリ公主が手で髪を払った。もちろんプロモーション映像である。

 映像の中のキラーリ公主は眼鏡をかけている。実際にはキラーリ公主は多少近眼だったが、銀河連邦の中のジュエリー系に属するエメラルド星で造らせたコンタクトレンズをはめていた。映像の中でかけているパープル・カラーの眼鏡は、これもエメラルド星でムーン・パイエルと呼ばれる月世界の天然鉱石を一㎏払って造らせたのだった。

 そして服装はと云えば、パープルのトップス。

 とっても薄くわざと小さめにしている。

 だからこそ、パープルカラーの妖しい輝きを通し、白い肌が透けて見える。

 そしてしなやかで柔らかい肩と、夜の海の波のような妖しい体の曲線がハッキリと分る。

 Lカップの胸にブラジャ
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  • ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中   ~第十五話④~ タイガーの咆哮

     駅前の商店街。一本奥に入ると、人通りはあまりない。小さな八百屋や雑貨店、理髪店、スナックが並んでいる。シャッターが下りたままの店もある。 駅前の一本奥の通りを、タイガーを連れた村雨春樹がゆっくりと歩いていく。 虎と同じように毛を縦縞に染められたウルフ・ハイブリッド。「狂犬」の異名を持つ恐ろしい犬だ。 そして春樹を囲むように弟の龍や宇野、松下ら六人の取り巻きが従っている。全員私服姿である。 春樹の左手に小さな八百屋があった。店の外に台が置かれ、夏みかんや八朔、バナナの盛られたザルが並べられている。「本日の特価 どれも三百円 美味しい果物ですよ」とカードが立てかけてある。 この近くだと大型ショッピングセンター「ハピー駅前店」はあるものの、車のない高齢者などは歩いて買い物にはいけない。 子どもが小さくてわざわざ車で買い物に行けない人もいる。町の片隅に今も残る心のこもったお店である。 突然、タイガーがうなり声をあげた。春樹がリードを放す。 春樹が冷たい笑いを浮かべる目の前で、タイガーは台に盛られた果物をひっくり返した。八朔や夏みかんが、バナナが道路に散乱する。龍や宇野、松下たちが落ちた果物を足で踏みつぶした。 八百屋の店長があわてて飛び出してくる。「君たち、何をしているんだ」 四十代後半のよく日に焼けた店長が、平気で果物を踏みつぶしている龍たちを見回す。八朔や夏みかんの汁が道路を濡らす。バナナが真っ黒になって無惨につぶれている。「ここにゴミ箱があったから、ゴミをキレイにしていただけですよ」 春樹が店長に嘲りの表情を見せた。店長が眉をひそめる。「君たち、どこの高校だ。食べ物にそんなことをするなんて、許されないことだよ」 鈴木が首を横に振る。「どこに食べ物があるんですか? みんなゴミですよ」 鈴木のそばで龍たちも声をあげる。「ジジイ、認知症か?」「汚い店だな。火でもつけた方がいいんじゃないか?」「ゴミ屋敷の親父!」 店長がたまりかねたように大声で叫ぶ。「いい加減にしないか。反省しないなら警察を呼ぶよ」 店長だって、「警察」とか、こんな言葉は叫びたくはないが、あまりの態度の悪さに苦渋の選択をしたようだ。 だが今日の春樹は、「警察」の言葉にも平然としている。「呼んだらどうですか? 知ってますか? オレは大手流通企業の『ハピー

  • ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中   ~第十五話③~ 運命の日だって知らなかった

     どうしてそんな日が来たのかは分からない。まさか運命がそう決めたのだろうか? 翌日。その日は祝日だった。ただ悠馬の学校では祝日を利用し、こうなきの施設点検が予定されていた。朝、悠馬はブレザーの制服に着替えると自室のケージにスーパー・ラバットを戻した。「今日は学校の用事で、僕ら一年のクラス委員は参加しなければならないんだ。午後には帰ってくるからね」 悠馬はスーパー・ラバットにそう話しかけた。スーパー・ラバットはといえば、ケージの中からじっと悠馬を見つめている。「じゃあ、待っててね」 悠馬が手を振る。スーパー・ラバットは悠馬から目を離さなかった。ドアを開けて部屋を出るとき、もう一度、振り返ってみる。スーパー・ラバットはまだ悠馬を見つめている。 悠馬は部屋に戻って、ケージの中からスーパー・ラバットを抱き上げた。 「行ってきます」 悠馬が声をかける。不思議なウサギ、スーパー・ラバットと、また何度目かのキスをした。 知らないうちに、スーパー・ラバットと唇を重ねていたのだ。 悠馬はもう一度、スーパー・ラバットをケージに戻し、今度は後を振り返ることなく部屋を飛び出していた。 悠馬が家を出てしばらく経った頃のこと。ふたりの家政婦が自宅の清掃をするため尋ねてきた。 母の芽衣と荒川先生が応対する。「私たちは出かけますが、後のことよろしくお願いします」「そうだ、先輩。ウサギを庭のケージに移さなければ」「そうだった」 母の芽衣が思い出したように叫ぶ。「全く、ずっと庭のケージでいいと思うんだけど」「その件は、また悠くんと相談しましょうよ」 母と荒川さんの相談が、果たしてどういう結果をもたらすのか? 今の悠馬は何も知らない。 

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